2026/06/07 08:44
又一週間間が空いてしまいました。忙しすぎて。けど自分に限らず、今この時代、この社会を生活する多くの人があらゆる意味で余裕が削られているのでは無いでしょうか。
でもその多くの人はそれを認めるステップにさえ進めていない様にも思えます。自分に余裕が無い事を認めてしまうと、その原因を求める必要に迫られますが、その追求と是正は途方も無い作業であると本能的に悟っているのでは、とも思います。ハッキリ言えばそれは政治に責任があるのですが、そこに辿り着く前に自己責任、自己改革の迷宮に囚われてしまうのが現代日本社会の一般的な感覚だと思います。
なので、ここまであからさまに酷い政治状況の情報を処理するのに結構困ってるんじゃないかな〜など個人的には思います。一緒に声をあげよう!と言い続けるしかないですね。無駄だとしても。届く人もいるだろうし。
さて、前回までで音楽カルチャーで共有される物語、と仮定した文章の解体と称した考察を終えました。今回からはその考察に至る過程で自分が読んできた本を紹介していこうと思います。今回はこれ。
『ロールアウト新自由主義下の主体形成 -学習指導要領の「ことば」から』久保田貢


です。この本は自分がそれまで読んできた新自由主義を扱う本とは一線を画すものでした。新自由主義、だとかネオリベ(ネオリベラル)とかはボンヤリと理解していましたが、この本は新自由主義を定義し、分類し、教育現場という領域から既出の研究などを交え具体的に研究されています。正直難しい所もあるのですが、ゆっくり読めば自分の様に無学な者でも結構理解できます。
とは言え纏める力が自分には無いので、音楽カルチャーの価値観(つまり私の様なサブカルオジサンの価値観)に関わると思った特筆すべき点を2点あげます。
1点目はタイトルにもある「ロールアウト新自由主義」という概念です。解体シリーズ「音楽とファシズムを繋げる言語」https://jitsuzai.base.shop/blog/2026/03/01/085847でも書いた、新自由主義には大きく2種類のものがあり、1つはロールバック新自由主義、もう1つがロールアウト新自由主義である事はこの本に書いてありました。そして日本はロールアウト新自由主義の形をとった政策が為されていると。
自分の言葉に噛み砕くなら、ロールアウト新自由主義的な政策とは、民間が自主的に市場の価値観に刷新する様に誘導する政治と言えると思います。私はその過程で、人々に政治や社会という概念からの離脱が起こっていると考えます。当然ながらそれによって政治参加や社会運動への参加は意識の外に追いやられていく。これはファシズム的な強権を持ちたい統治機構に非常に有利に働くと思います。
そしてここもポイントなのですが、それは社会の様々な領域でまだら状に進行している。音楽カルチャーの領域(サブカル)は元々が資本主義のシステムに強く組み込まれている為、ロールアウト新自由主義には脆弱であったと思います。
続いて2点目は、本の副題でもある様に「学習指導要領」の「ことば」から新自由主義を洗い出している所です。まず前提として、日本は戦後すぐから教育に介入を始めています。
戦争中の教育は誰もが知る通り、教育勅語などを用いた皇国臣民を作り上げる為の教育だったのでそれらは戦後解体されるのですが、流石は自民(右派)と言うべきかすぐさま戦後民主主義的なリベラル教育への攻撃を始めました。(家永教科書裁判などが有名です)
この本では1989年の学習指導要領から分析がスタートされるのですが(それ以前も含む)、これも又、自民党の教育への介入の流れの上にあると言えると思います。学習指導要領の改訂を重ねる度、文言に新自由主義的な「ことば」が加わっていく様は読んでいてゲンナリしました。何故なら、正に自分(と自分達以降の若者)が学校教育を受けていた頃と重なっているからです。これらの「ことば」は「政策言語」であり、自分達はガッツリ国から新自由主義を内面化する主体として教育されていた訳です。こりゃあ小泉純一郎の政治に危機感を抱けなくて当然だった、と思いました。
とは言えもうめちゃくちゃ面白い本で、様々な「ことば」例えば"自立""きまり""安全"などがどの様な政治的背景から学習指導要領の中で増加したのがが一つ一つ可視化され腹落ちします。(自分の子どもが学校に入学してからもよく見る言葉が多く、教師との懇談にも役立っています)
中でも"公害"が減少し"環境"が増加した事は象徴的に思いました。元々は国や企業にその責任がある"公害"から、それはもう終わった事であるかの様に地球規模の"環境"教育へのシフトがあった。責任の所在を求める市民的な意識から、「自然を愛する」の様に漠然とした(そして内心の自由に踏み込んだ)教育への変化は、私達から何を奪い何を埋め込んだのだろうと考えます。音楽カルチャーで見る価値観なんかは断然後者ですよね。
長くなりましたがとにかく面白い本です。自分がどの様な教育をどの様な意図で受けたかを振り返る事は、自分が何者であるかを知る手がかりになると思います。次回も本の紹介になります。よろしくお願いします。
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